2012年12月25日火曜日

「産ませてもらう」ことと「産むこと」の違い

そこでは現在、初産婦のほとんどに会陰(出口)切開が行なわれ、陣痛促進剤を用いての、週日の午前九時から午後五時までの期日および時間指定出産が行なわれている場合が多い。世界的にも高い能力と技術を保持していた日本の、開業産婆たちが一番誇りとしたのは会陰を保護し傷を作らないことだった。それだけ、産む人の痛みや身体の保護に心をくだいたわけだ。切らないで、もうちょっと待つことが、どれほど母子に危険なのか。麻酔なしで切る痛みにかわるほどの危険があるのだろうか。

また陣痛促進剤を使用して週日のしかも昼間にお産をすませることについては、産科医の側から、「夜間、医療者スタッフの人数の少ない時に産むより、スタ。フの充実している昼間に産む方が安全に決まっている」という理由を聞いた。しかし、お産は何か基本なのかと考えてみた時、胎児と母体の成熟がかぎとなって、そこから分泌されるホルモンがGOサインをにぎっていることに気づく。大切なのは、産婦と胎児の身体の状態なのだ。いくら優秀な産科医がいても、まだ機の熟していない子宮に、無理矢理促剤をかけて収縮を起こさせたら、子宮破裂が起こる可能性が高く、それを防ぐのは難しい。

医療スタッフの人数だけが大切なのではないことはヽ断言できる・しかしヽやはり産科医療スタッフの充実によって、安全度が高まるのも事実。あまつさえ、出産は自然の場合、昼間も夜間もほぼ同数程度起こることは定説なのだ。ならば、せめて産科医は助産専門家として、「産科では夜間のお産も多いこと、一般病棟のような、夜間の少数人員配備条件では安全な出産はのぞめないから、夜間スタッフの増員に対する適切な補助金などの増額を」という方向で、強力に運動を展開すべきではないだろうか。

こうして出産の現状をみていくと、産科医が出産の専門家とみなされていること、また産科医のほとんどが男性であることから、「産ませてあげる」、または「産むことを管理し、手助けする」立場を中心に、方法が決定されていることがわかるし、社会一般の人々もまた専門家の決めた方法こそは正統な方法であると信じ切っている。そして、それに疑問をはさんだり、違う方法を行ないたいと希望する産婦を、「ほとんどの人がいい顔をしない」などの理由によって、非難し、彼女がよほど勇気をもっていない限り、自分の身体を中心とした自分らしいお産を実行することを難しくしている。

こうして、妊産婦は自分の身体に起こることでありながら、自分にはどうにもわからない領域に属する事柄だと、自然に思い込まされ、心底から自分で産む気で臨んでいないことがわかる。そのためとくに、妊産婦が自身の身体変化や徴候を知る手がかりとなる体感的お産情報の収集や、お産状況の共通言語化か、大変遅れることとなった。共通言語化とは、誰もが身体感覚情報として、その言語情報を受ければ、すぐさま表現者の持つイメージと同一のイメージを、思い浮かべることのできる言語表現である。

2012年9月6日木曜日

より「快適な」機内の過ごし方

自分の座席を知ろう

最近は事前に座席を指定できるフライトが増えているので、希望する場所にすわりたい場合には、予約の段階で確保しておくとよい。

搭乗前に自分の座席がどの辺かを確認しておくと、乗り降りがスムーズだ。座席の番号は、機体の前から若い順番でふられている。ジャンボ機の場合には二階席(七〇番台が多い)もある。また、飛行機は左側を優先するので、機首に向かって左からABC順となる。

ジャンボ機のエコノミークラスの座席は横がI〇列で編成され、AとJが窓側だ。通路が二本ある広胴機の場合の搭乗時には、ABCD席は入って手前の通路、FからJまでは奥の通路を利用した方がよい。ちなみに、搭乗をスムーズに行うために、搭乗にあたっては後部の乗客から先に案内するエアラインもある。

窓側か通路側か

飛行機の座席を選ぶときに迷うのは、窓側か通路側か、ということだ。外の景色を楽しむのには窓側しか考えられないのだが、他人に気がねなく席を立つには通路側がよい。特にジャンボのエコノミークラスの窓側にすわると、二人を立たせなければ通路には出られない。

二人が家族や同じグループならば気は楽だが、知らない人が気持ちよく熟睡しているのを立たせるのは気が引ける。三人掛けシートの真ん中席に席を指定されるのも、ゆううつだ。真ん中のシートの幅を他よりも広くした機種(エアバスA320など)もあるほどだ。そこで、旅に慣れたビジネスマンたちは通路側を好んで確保する。

ちなみにトイレが集中するのは、食事の後と着陸前なので、この時間を外すとずいぶん楽だ。特に食事が済みスチュワーデスが食器を片付けた後がラッシュアワーになるので、片付けにくる前に食器を何とかしてトイレに行くと、すいている。

非常口の前の席は通路部分を使えて人気も高いが、スチュワ七アスが離着陸のときに対面状態で着席するという幸運(?)にも恵まれる。この付近のスペースは、ゆとりがあることで人気が高いのだが、長距離便では乗客たちのたむろする場所にもなり、フライト中は話し声がうるさくて眠れないこともある。

ちなみに、非常口前の席は、緊急脱出のおりにゴム製滑り台の脱出シュートを下で支える協力者に充てることになっており、「若くて力のありそうな男性」が選ばれることになっている。

寒さ、乾燥から身を守る

意外に盲点なのが機内で寒さと乾燥から身を守ることだ。国際線のジェット機は、高度一万-一万二〇〇〇メートル、気温マイナス五〇-六〇度の成層圏を飛行するため、機内も相当冷え込む。夏の日本からハワイやクイヘ行くときなど、夏物しか持っていなかったり、上着をスーツケースに入れて預けてしまっていると、どうしようもない。機内持ち込みの手荷物の中に、カーディガンや大判のスカーフを一枚入れておくとずいぶん助かる。

機内ではスチュワ七7 スが貸してくれる毛布を早めに借りておこう。それでも機種によっては非常口付近の冷え込みがきつく、毛布だけでは寒さをしのげない場合がある。また、機内の乾燥も大敵だ。飛行中の機内の湿度は五-一五%(砂漠よりも乾燥した状態)になってしまうので、なるべく水分を多めに取ることを心がけよう。女性は保湿効果のある化粧水、乳液、クリーム、リップクリームを手元においておくとよい。

意外に重要なのは目で、コンタクトレンズを入れたままにしておくと、乾燥で角膜に障害を起こすこともあるという。メガネに替えるか、目薬を頻繁に使用することだ。さらに、機内では静電気もたまりやすい。力-ペットが敷かれている上に乾燥も輪をかけるためだろう。機内で快適に過ごすには、ちょっとした準備でずいぶん楽になる。

2012年8月23日木曜日

北朝鮮利権と族議員

「北朝鮮族」とは、政党の訪朝団を積極的にまとめ参加する政治家たちである。北朝鮮族の代表として関係者が認めるのは≒竹下登元首相である・竹下元首相の意向を無視しては誰も日朝問題に手を出せなかった。なぜなのか。竹下元首相が、大蔵省に絶大な影響力を持っていたからである。日朝国交正常化の際に「正常化資金」の額を決めるのは、竹下元首相しかいないとみられていたからだ。それはまた、政治資金にもつながる影響力であった。

竹下元首相以外では、自民党では元竹下派の野中広務幹事長が北朝鮮との深い関係を自他共に認めてきた「最大の実力者」である。ただし、野中幹事長の場合は金容淳書記との個人関係が全てで、全容淳書記を過大評価し過ぎたきらいがある。金容淳書記が工作機関の責任者であるとの認識と国益への配慮がやや足りなかったのではないか、と私は判断している。北朝鮮も冷たいもので、二〇〇〇年の夏ごろから野中氏の影響力にかげりが見え始めると平壌は「野中の次の実力者ぱ誰か」と、日本で聞きまわったりした。

この他には中山正暉衆議院議員や加藤紘一元幹事長、山崎拓元政調会長らも北朝鮮に強い関心を寄せた。加藤元幹事長と山崎元政調会長は、その後は北朝鮮問題に距離を置くようになってい

中山議員の場合は、最初は日本人拉致疑惑に関心を寄せ「拉致議連」の会長まで務めたが、一九九七年の訪朝団に加わった後で態度を百八十度変えた。「拉致問題は、国交正常化後に解決すべき」などと発言し、早期の日朝正常化を主張し批判を浴びた。なぜ、中山議員が訪朝後に北朝鮮への姿勢を変えたかについては。納得できる説明は報じられていない。

野党では、旧社会党時代から深田肇元議員と北朝鮮との関係が知られている。深田元議員も、金容淳書記と親しい関係にあったといわれる。旧社会党は、党ぐるみで「北朝鮮族」と呼んでもいいほどの状況にあった。それでも、村山富市元首相だけは北朝鮮にはまったくかかわらない姿勢を貫いたが、一九九九年末に訪朝団の団長に祭り上げられ、その後は日朝友好親善団体の会長職におさまっている。

日本の政治家は、なぜ北朝鮮にそれほどの関心を示すのか。これは、アメリカ政府当局者が常に抱く疑問である。アメリカの政治家の場合は、外国について日本の「北朝鮮族」のような肩入れは見られないからである。金丸訪朝団以来、アメリカの政府当局者は日本の政治家は日朝正常化資金にまつわる政治資金に期待している、と考えている。

それは、正常化資金が適用される経済プロジェクトを受注した企業からの「政治献金」への期待である。正常化資金の金額については、六〇億ドルとも一〇〇億ドル(約一兆円)ともいわれている。その資金が提供される建設プロジェクトを、日本企業が受注するように北朝鮮側の実力者と話をつければ、政治家は政治的な裏金を受け取れるのではないかと。アメリカ政府はみているのである。こうした疑惑を払拭するためには、日本の政治家は「正常化資金ノータッチ宣言」をすべきであろう。

日朝秘密外交接触・一九九九年一〇月

北朝鮮の統一戦線部の干渉を排除して、両国の外務省同士の接触が図られたことが一度だけあった。

一九九九年一〇月一八日から二〇日まで、シンガポールで日本外務省の北東アジア課長と北朝鮮の日本課長の秘密会談が行われた。このおよそ半年前にも、シンガポールで日本のアジア局長と北朝鮮側の日朝交渉大使との秘密会談が行われたことがあった。この時は。アジア太平洋平和委員会の担当者が同席しており、外務省同士の会談ではなかった。

この一〇月の外務省同士の秘密会談には、統一戦線部は強く抵抗したが、金正日総書記の許しを得て実現したのだった。関係者によると、シンガポールでの両国外務省の課長会談では、一九九九年の一二月末までに国交正常化交渉の予備会談を開催することで合意したのだった。予備会談の日時については、二一月二〇日頃に行うことになった。また、その後に本交渉を再開することでも、基本合意したという。

そのまま事が運べば、日朝の外交当局者による初の合意で正常化交渉が再開され、外交当局を中心にした外交展開が行われたはずであった。ところが、日本と北朝鮮の国内状況は、外交当局の単独行動を許すほど単純ではなかった。外交当局に主導権を奪われては困る人たちが、東京と平壌には存在したのである。

もっとはっきり言えば、「白分たちが日朝正常化交渉の再開に道を開いた」と喧伝したい人たちがいたのである。そうすることで、日朝関係への発言権を強化できるからである。国益を考えるなら、政治家が前面に出ずに外交当局にまかせて、交渉目的の実現を図るべきである。ところが、国益よりも私益優先に必死になる人々が日朝の双方に存在したのである。

日朝交渉に道筋を開いたと報道させることが、どうして私益優先になるのか。日本の政治家にはよく知られるように「族議員」といわれる人たちがいる。「建設族」や「郵政族」「文教族」である。こうした族議員は、業界と結びついて政治資金を得ていると一般には受け止められている。同じように、朝鮮問題に関わろうとする政治家がいる。この本ではあえて「北朝鮮族」と命名しておきたい。ともかく、外交政策で政治家が功名心に走り、利権に群がるのは中曽根康弘元首相も指摘している通り、危険である。国益を失わせ、国家に損失を与えるからだ。

2012年7月17日火曜日

満足感を高めな食事

乗客にとって楽しみな食事も、サービスするエアラインにとっては制約が多く苦労する課題だ。最大の制約は、十分な火力を使えないこと。

飛行機の中では裸火は使用できないので、電気で加熱しなければならない。電気は、短時間で大人数の食事を温めるのには適していないエネルギーである。しかも、調理してからサービスするまでの時間が長いため、一度火を入れた食材を温め直すことになる。

かつての飛行機は十分なスペースを確保できなかったため、食器類の簡素化も切実な課題になっていた。したがって、一枚のプラスチックトレーに前菜からデザートまでを詰め込んだお仕着せのメニューが主流を占めていた。食器とナイフとフォークにもプラスチックを使用し、メニューの選択の幅はビーフかチキン程度のものだった。

ところが、最近ではサービス競争のお陰で機内食の改善が進んでいる。ビジネスクラスでは、布製テーブルクロスに本物の陶器やガラス、ステンレスのナイフとフォークを使用し、給仕はオードブル、メインディッシュ、デザートの三回に分けて行われる。

選択は肉、シーフードなどニ-三種類に加えて、日本発着路線では和食も加わり、三-四種類に広かった。しかも、加熱設備の改良により、短時間で高い温度への加熱ができるようになったことから、味もよくなった。

エコノミークラスの改善も大幅なもので、アルコール類の飲料の無料化、ステンレス製のナイフとフォークの使用、和食メニューの採用、間食サービスなどが取り入れられている。事前予約が必要だが、菜食主義や健康食、宗教上の制約のある食事などの注文も、可能になっている。

2012年6月30日土曜日

機上でのインターネット間近

今日、通信衛星を使って地上の電話と結ぶ機上電話(クレジットカードで決済)はかなり普及しているが、現在インターネットと接続するシステムの開発が急ピッチで進んでいる。

ボーイング社の進めている構想によれば、二〇〇一年後半には米国内で実用化し、欧州で二〇〇二年末、大西洋地域で二〇〇三年後半、そしてアジアは二〇〇四年後半の運用を予定しているが、接続料は3時間で10ドル20セントだという。

構想が実現すると、ビジネスマンは離着陸時以外はネットワークから外れる心配もなくなり、空の旅も安心してできるようになる。

ビジネスやファーストクラスでは、隔離されたスペースで思う存分仕事のできる「オフィススペース」や、ゆったりとアルコールの楽しめるバーカウンター、マッサージシートなども設置されている例もある。

自分の都合で楽しめるビデオ、食事

機内の娯楽設備としては乗客が自分の好きな時間に、希望のオーディオープログラムを楽しめる「VOD(ビデオーオンーデマンド)システム」が画期的だ。エコノミークラスに導入しているエアラインはまだないが、レーザーディスクを利用し、乗客からの要求デマンド)のあった時点で一枚のディスクから時間差をつけて情報を読み取って映像を送る仕組みだ。

同じディスクで複数の乗客のまちまちな時間のリクエストに応えることができるだけでなく、食事を楽しんだり、トイレへ行くために、乗客が途中で止めることや戻すことにも対応できる。

また、食事もいつでも希望の時間にとれるよう準備を整えているエアラインもある。ブリテイツシュ・エアウェイズは、新しいファーストクラス「ファースト」の導入にあたって、食事時間とメニューの自由化を盛り込んだ。食事時間は、乗客の気の向くままで、飛行中自由に指定することができる。

離陸後に軽い食事を済ませて寝るのもよし、ビデオを楽しんで腹がすいたところでタップリとるのもよし、ということだ。メニューは五-六皿で構成されるフルコースの中から選択もできるので、メニュー、量ともに選べる。まさにファーストクラスの極致といえるだろう。

同様のサービスは、アンセットーオーストラリア航空でも始められており、ビジネスクラス(同社はファーストクラスを廃止しているので、事実上の最高クラス)では、同乗しているシェフが盛り付けた料理を乗客の希望する時間にサービスする。

これからの機内サービスは、質の高さだけでなく時間でも希望がかなえられそうだ。飛んでいる状況がひと目でわからエアーショウシートテレビのついている機材にはたいてい「エアーショウ」のプログラムが組み込まれている。

「空で行われるミュージカルショウ」かと思ってチャンネルを合わせると落胆することになるのだが、地図上に描かれたビジュアルと数値で搭乗機の飛行状態を刻々と表示する。表画面で地図の上に飛行機のマークが現在の飛行の方向と位置を示す。

地図は航路全体の飛行ルート、現在地点の拡大とが交互に現れるので、飛行全体の進み具合と通過地点を確認できる。搭乗機が飛行の方角を変えれば、画面上の飛行機のマークも向きを変えるという連動ぶりなので、リアルタイムの情報を見られる。窓側席にすわっている場合には、拡大図と下の景色を見比べることができ、特別の感激がある。

裏画面では、目的地までの距離、飛行高度、飛行速度、外気の温度、目的地までの飛行時間などが表示される。離陸して上昇を続けると高度を示す数値はどんどん増え、安定飛行に入ると一万-一万二〇〇〇メートルに達する。その頃になると温度は大きく下がり、マイナス五〇-六〇度を指す。あらためて飛行機とはたいへんな高空を飛んでいるものだという実感がわいてくるだろう。

目的地に近づくと、数値がゼロに向かって減っていく。高度は高空では五桁あった桁数も、着陸直前には三桁になる。目的地までの飛行時間がゼロを表示する瞬間、搭乗機は大地をとらえ、身体には大きなショックが加わる。同時に画面は「目的地までの距離○キロ」を告げて、飛行が無事に終了したことを実感できる。

娯楽設備で差別化を図る

ある調査によると、国際線の航空旅客の機内での一般的な時間の過ごし方は、二五%が食事やトイレなど生理的な時間、三五%が睡眠時間、残りの四〇%が娯楽に使われているという。十一時間のフライトであれば、三時間が食事等、四時間一〇分が睡眠、四時間五〇分か娯楽となる。

機内のサービス娯楽設備は、いまやビデオ、テレビゲーム、カジノとエスカレートし、九八年には航空業界全体で一七億ドル以上が娯楽設備に投じられた。

世界のエアラインは近年、液晶テレビをエコノミークラスを含めて全座席に組み込むようになった。機材の進歩によって画像や音質がよくなっていることに加えて、プログラムの内容がバラエティに富み、個人の好みで好きなプログラムを選択できる。

「グリスワールド」と名付けられたシンガポール航空の娯楽システムは、任天堂のテレビゲーム、映画、スポーツ、芸術、ニュースなど二二のビデオチャンネル、二一のオーディオチャンネルが、日航の新型ジャンボに搭載されている「マジック・システム」では、映画一〇、音楽一八チャンネル、ゲームー○種が用意されている。

また、ヴァージン・アトランティック航空の「オデッセイ」はツァージンクループの強みである音楽番組九チャンネルをはじめ、ビデオこIチャンネル、テレビゲームー○種、飛行状況がひと目でわかる「エアーショウ」(ナビゲーションマップ)が組み込まれている。

エコノミークラスでも一人一台のシートテレビが設置されているエアラインは、このほかにキャセイ・パシフィック、JAS(B777のみ)などだが、これからはどんどん増えていきそうだ。

また、刺激を強めているエアラインの中には、各国の法律にしばられない公海上の空を飛ぶのをよいことに、ギャンブルを機上に取り入れている会社(ヴァージンなど)もある。

乗客はクレジットカードを使って、最大三五〇ドルまでの損を覚悟するかわりに最大三五〇〇ドルの儲けを楽しむために、スロットマシンやポーカーをビデオゲームでチャレンジする。

航空会社の方は、これらのギャンブルで年間五億ドルの利益を上げているというのだから、乗客の熱中ぶりがわかる。

「速く、快適に」飛ぶ

飛行機旅行の最大のメリットは「速く、快適に」移動できることだ。「速さ」は、他の交通機関に比べて優勢である。現代のジェット旅客機は、マッハ(音速)の〇・八五倍の時速約一〇〇〇キロのスピードで飛行できる。したがって、陸海をまたがる東京-札幌間のような区間では圧倒的な強みを発揮し、航空旅客のシェアは九七%に達している。

しかし、空港とを行き来する(アクセス)交通手段にかかる時間を考えると、短距離では鉄道にかなわない。その分岐点は、距離で四〇〇キロ、鉄道の所要時間で三時間といわれている。

国内に当てはめると、東京から仙台、新潟、名古屋は鉄道が圧倒的に強く、岡山あたりから航空が盛り返す。当然のことながら、出発地と到着地の空港間だけでなく、自分の家の戸口から目的地の家の戸口の「ドアートウードア」の所要時間が問題なのだ。

飛行機にはコンコルドのようなマッハ二・二(音速の二・二倍)の超音速機もあるが、環境問題が完全に解決できていないことから、就航路線は限られている。また、運航コストが高いことから、大量輸送に適したジャンボ機などに運賃面でかなわない。

次に「快適さ」だ。初期の飛行機は、エンジンの騒音や振動に加えて客室が十分に与圧されていなかったので、寒く、耳鳴りなどが起こる不快な乗り物だった。オーバーを着込み、襟巻きをして機内に乗り込んでも、寒風が吹き込み、乗客はひたすら寒さと振動に耐えていた。

それが地上とほぼ同じ環境で飛べるようになったのだから、たいへんな進歩といえる。さらに、ジャンボジェット機の就航によって、座席の広さ、過ごしやすさははるかに向上したものの、飛行機の航続距離が伸びたことによって直行便が増えた。乗客はただ座っているだけなのだが、さすがにI〇時間を超すフライトは正直いってきゅうくつだ。

利用しやすいダイヤとは

旅客が利用しやすい交通機関の運航ダイヤのポイントは、①一日中まんべんなくダイヤが組まれている、②覚えやすいようにパターン化されているIの二点にある。逆にダイヤが片寄っていたり、運航時間帯でダイヤがまちまちだと、いちいち確認しなければならず面倒くさいだけでなく、行動が交通機関によって制約されてしまう。

時刻表を持たずに空港へ行ってもあまり待たずに乗れ、いったん覚えた出発時刻が他の時間帯でも適用できるなら、とても便利だ。

国内=日帰りができるダイヤか

日本の航空は、欧米に比べると便数が非常に少ない。幹線を除き、地方路線では一日一便の路線も少なくない。地方路線でも一日に最低二便のフライトが欲しい。

一日一便では日帰り旅行もできず、航空旅行のメリットが発揮できない。ちょっとした用件ならば泊まらずに済ませられれば、航空旅行の価値は高まる。宿代を節約できるなら、航空運賃が多少割高でも納得できるというものだ。

国際線は毎日運航、パターンダイヤが最適

国際線でうまくできているのは、東京―香港線だ。日航もキャセイも毎日三便ずつを運航しているうえ、ダイヤを朝から夜まで適度に散らしている。朝一番のフライトで飛べば午後一番に香港に入れ、翌日の最終便に乗ればI・五日をまるまるビジネスに使える。

しかも、毎日同じ時間に飛んでいるので、都合が悪くなれば日にちだけずらせばよい。スケジュールをIから組み立て直す手間が省ける。

この対極にあるのがニュージ圭フンド航空で、ダイヤがまったくバラバラだ。たとえば大阪発のオークランド行き。週に七便運航しているのに、同じ九八便が月曜は一八時二〇分発(クライストチャーチ経由)、木・金曜は二一時発(直行)、土曜は一八時五〇分発、日曜は一九時四五分発でクライストチャーチ経由。火曜と水曜は便名が三二便に変わって火曜の出発時刻は二〇時一五分発(直行)、水曜は一六時五〇分発(クライストチャーチ経由)という具合である。

日本や欧州系のエアラインは週一便ずつ増やしていく堅実な戦術をとるが、米国系は毎日運航のマスマーケティングを基本とするので、利用者はわかりやすい。就航するならば週七便、逆に七便の乗客を集める自信がなければ就航しない、というのが原則だ。

だがその一方、公共性などはまったく考えないので、儲かる時間帯にフライトを集中させる。たとえば、東京-サンフランシスコ線が典型だ。ユナイテッドは毎日二便、週一四便を運航しているのだが、東京発の時刻は一七時と一九時。そのためもあって、他社を含めて東京発のサンフランシスコ行きダイヤは毎日五便あるものの、出発時刻は一五時一〇分から一九時の三時間五〇分の時間帯にすべて集中している。交通渋滞などに巻き込まれて空港への到着が遅れても、他社への振り替えもできず、その日の出発はあきらめなければならない(ニューヨークのジョン・F・ケネディ空港行きも毎日五便だが、出発時間帯は八時間に分散している)。

そして、ビジネスマンに重要なことは、出発と到着の時間帯だ。もっとも理想的なのは、こちらを勤めの終わった夜に出て、目的地へ早朝に着ければ時間のむだがない。

かつての欧州線がアンカレッジを経由していた時代にはうまくいっていた。成田を夜の二二時頃に離陸するフライトはロンドン、パリに早朝の六時頃に到着し、朝から活動を始められた。

それが直行便が就航するようになって、飛行時間は短くなったものの、かえってタイミングは悪くなり、成田を昼頃発って現地に夕方到着する。日本でも出発当日は仕事にならず。ヨーロッパの第一日目も寝るだけという状態になる。

望ましい「新しい機材」

新しい機材は「おニュー」で気持ちがよいというだけでなく、実際のメリットが大きい。飛行機は量産品ではあるものの、すべてがオーダーメイドのようなものなので、製造のたびに改良が加えられてゆく。問題箇所や使いにくい点は、同型機でも、新しいほどどんどん改善されるのだ。

乗客からすると、より。楽しく、快適‘になっている。近年の機体では、まず収納場所が増えている。B747ジャンボ機でも、―(ダッシュ)200型は乗客の数に対して収納スペースが少なく、長距離便では乗客同士で頭上の荷物棚の取り合いになることも珍しくなかった。

荷物棚からあふれた荷物は座席の周囲に置かざるをえず、ただでさえ狭いスペースがより窮屈にならざるをえなかった。しかし、-400は頭上の荷物棚が広げられたため、ほとんどの乗客は近くの収納スペースが利用できるよう配慮されている。

また、二階席では座席と窓の間にも据え置き型のスペースがあり、窓側に座った乗客は事実上自分専用の格納スペースを使うことができる。

もうひとつは、娯楽設備が充実していることだ。近年のサービス競争では、娯楽設備が重要なテーマになっている。電子技術の発達により、プログラムが多彩になったうえに個別対応が可能なので、マイペースで娯楽を楽しめるようになった。

運航するエアラインとしても、条件が許せば新造機を積極的に導入したい。イメージのうえで好ましいだけでなく、故障も少なく、また整備費がかからないという具体的なメリットがある。スイスやシンガポール航空などは、新造機をどんどん買い入れ、価値が下がらないうちに転売する方針をとっている。だが、資金が多く必要になるため、なかなかできることではない。

2012年6月21日木曜日

関係に見合うものしか出てこない

金城孝次さんは沖縄の出身ですが、心理療法家になる訓練を京都で受けられ、しばらく京都で仕事をされていましたが、のちに故郷に戻られて、いまは沖縄で夢分析や箱庭療法により心理療法に取り組んでおられます。

金城さんは、関係の場のリアリティについて、次のように問いかけておられます。「関係づくりを通してクライエントは癒され、心のエネルギーを取り戻し、そして自分のあるべき姿を見出し、成長していくと思われます。

関係の場のリアリティに見合ったものしか相手が表現してこないとすれば、『関係の場のリアリティ』として心理療法家がクライエントとの間で気をつけることはどんなことでしょうか。

かかわる者も対極性の中に身を投げだして、そこに生きることを学んでいかなければと思うのですが」クライエントはまさに関係の場のリアリティに見合ったものを出してきます。関係が薄ければ、薄いことしか出てこないし、深ければ深いことが出てきます。

それともう一つ気をつけなければならないのは、非常にむずかしいクライエントの場合、関係の場のリアリティを超えたものが出てくることもあります。

たとえば、会ったばかりでまだ関係ができていない段階から、普通なら隠しておく自分の秘密を次から次に話しだしたりします。

これを、これだけ話してくれたのだから、自分は信頼されているに違いないと思いこむのは勘違いです。それは抱える問題があまりにも大きすぎるために関係の場の認識力がなく、それでいろいろしゃべっているだけなのです。まだ関係の場はなにもできていませんから、そういう場合は、その話をいったんとめなければなりません。

カウンセリングに熟練してくると、最初に挨拶を交わしただけでも、ある程度の関係の場をつくることができるようになりますが、通常は、関係の場というのはその場に応じてだんだんとつくっていくものです。だから、自分が感じているリアリティを超えて出てくる場合は要注意です。そうとうむずかしいクライエントだと覚悟したほうがいいでしょう。

2012年5月16日水曜日

経営者や管理職が従業員一人一人の生活を考えているわけではない

現在は就職状況が悪いので、募集すると人が必ず来る。入社段階で選別しておいて、入社後も辞めるやつはすぐ辞めていい、というような態度が見えます。買い手市場だから、企業は思いっきり付け上がっています。「代わりはなんぼでもいる」というふうに。

経営者や管理職が従業員一人一人の生活のことまで考えているわけではないし、利益のためや自らの保身のためなら、一緒に働いた人のクビを切るのも、平気です。それでもわずかにのこされていた歯止めの部分も今では壊れてしまった。企業は利益の追求のために突っ走る。

それに対して、政治や社会全体が、やり過ぎだと止めに入ってこそ、バランスが取れる。そうでないと、その企業はとりあえず儲かるかもしれないけれど、社会のコストが大きくなって、社会全体としては大きなマイナスになる。

アメリカン・スタンダードは、そのむき出しこそ尊いという。ネイティブ・アメリカン(アメリカ・インディアン)は殺してよいということと同じです。馬鹿馬鹿しいというか、まるで獣みたいな発想に、日本社会は何も考えずに乗ってしまった。

それは民族性がどうこうという問題ではなく、資本主義はほうっておくとそうなります。システムの暴走を何とか止めるのが、人間らしい知性というものだと、私は思うのですが。今の日本も日本の企業も変わらなければなりません。

同時に、働く人一人一人も意識を変えなければならないということです。そして、人間の自由や尊厳ということを重視するな会社に勤めるという選択肢も検討してみるべきではないかと思うのです。

サラリーマンは経営者からなめられている

富士通といえば、山本卓億・富士通名誉会長が、現在の状態でもなお、日本のホワイトカラーの生産性は低すぎる、もっと働かせられるように法改正を日本経団連として求めていく、すでにその工作に着手している、というコメントをしたことがありました(「週刊朝日」二〇〇三年七月四日号)。シリコンバレーでは徹夜が当たり前でみんなオフィスの床に寝て納期を守っている、日本もそうすべきだし残業料なんか払う必要はない、という主張です。

過労死や自殺がバタバタ出ているのに、サラリーマンはそこまでなめられているわけです。山本名誉会長は一九八一年から九〇年まで富士通の社長を務めた有名な経営者ですが、あの時代の、環境に恵まれていたからこその成功だったと、どうして謙虚になれないのでしょうか。

自分の恵まれていた条件を棚に上げ、人様には平気で無茶を言える神経を、私は理解できません。むき出しの企業論理に歯止めをかけられないものでしょうか。