2015年11月4日水曜日

中国政府からみた駐在員

合弁の場合でも政府系と合弁する時は、相手側がその地域の政府とグルになって高い資産評価をする場合がある。また、第三者機関を通じて調査しても中々実態が分からない。結局は周りの人の評価を聞いたり、少しずつ取引をして、その会社の責任者の考え方、態度を見ながら本当の取引条件を見極めて行くしかない。最初から、有利な取引条件や大きな取引は出来ない。これをおろそかにすると、後で資金繰りで苦しむことになる。中国で怖いのは資金繰りである。特に会計法で会社経営をしている場合、売上基準は出荷量であり、帳簿上は利益が出ているので、安心してしまう。取引額が大きくなればなるほど、資金繰りをしっかり立てておかないと気が付いたら、「金がない」という状況が発生する。中国では銀行に行ってもすぐ金は貸してもらえない。

顧客が外資系といっても、日系といっても安心は出来ない。それは日系の顧客が中国国内の顧客への販売を中心としている場合である。その日系顧客の先の中国系顧客は日系の顧客に金を払わないからその付けがこちらに回ってくるからである。手形でも銀行保証手形ではなく、一般の商業手形を受け取る場合は余程相手が信用できるか、相手の致命的な弱みを握っていないと大変な事になる。基本的には「いつもニコニコ現金払い」が間違いない。相手が個人経営から大きくなった会社は気をつける必要がある。逃げてしまえばそれまで。国有企業系は、大事な取引先から、先に資金を支払う。ある時、当社の中国の顧問弁護士に相談をした。相手が未払いの場合、差し押さえは有効か否かの質問をしたときの回答は「差し押さえなどをしなくても良い常態で取引をすべき」との回答である。中国は、土地は国のものである。差し押さえても国との借地契約が当人となければ意味がない。よくある例は、工場と従業員を渡す、と言われてしまえばそれまでである。そんなもの貰ってもかえって困るだけである。

裁判所に訴えて、価値のある不動産や動産を差し押さえようとしてもその許可が出る頃は、工場は「もぬけの殻」となっている。例えば車にしても彼らは危ないと思ったらすぐ売却して後はリースで借りている。そんなことはこちら側に分からない。許可が降りる頃は差し押さえるべき物件がない。自宅を取り押さえようとしても手続きはそんな簡単ではない。車と同様なことが行われている。最近は、外資系でも個人経営に近い会社は、業績が悪くなると、会社をそのままにして夜逃げをする経営者がいる。従業員も会社もそのままにして。変だと思って催促をしにその工場に行くと経営者が一時帰国しているという従業員の回答。二、三回行っても同じ場合は、「やられた」と考えるしかない。中国人同士でもこのようなケースの場合、中々有効な手立てがないのだから外国人には更に難しい。

中国で商売をするのは難しいと言うが、販売をするだけなら難しくはない。安く、後払いで、品質がある程度保たれていれば、販売はすぐ出来る。勿論後で資金回収に泣くことになるが。中国ではやはり信用は人との関係に結びつくことが非常に多い。個人企業の日本人が、中国に来て日本語の出来る中国人を安心感からか簡単に信用するケースも危険だ。家族付き合いもないのにすぐ信用し、偏されたケースもよく聞く。相手がどんな人物かの調査も必要である。その場合その人が付き合っている人の評判も知る必要がある。前著でも簡単に触れたが、改めて触れてみる。これは中国とは限らない。何処の国でも言えることである。また同じく日本でも言えることである。

前著でも書いたが、中国も時代の変化(中国の発展)につれて考え方も変わって来る。中国沿岸地区の大都市では企業誘致も労働集約的な組み立て産業から、ITやソフト関係、環境関係など高付加価値製品を生み出す企業に変化してきている。那小平が提唱した沿岸地区を先に富ませ、その富を内陸にという政策を、民間を中心に進めていただけでは成功しないということから、政府が直接乗り出した。西部地区開発、束北地区振興、または各種メガロポリス開発と広域開発を図ることにより、その成果が見え始めた。沿岸地区の富が徐々に内陸部及び沿岸地区へと点から面へと変化させてきている。日本の場合は東京や大阪、中部地区が発展してその工場をよりコストの安い地方に移すことによって地方の活性化が見られた。その地方のコストも合わなくなると更に安い地域(国外)へと移って来た。