2012年6月30日土曜日

機上でのインターネット間近

今日、通信衛星を使って地上の電話と結ぶ機上電話(クレジットカードで決済)はかなり普及しているが、現在インターネットと接続するシステムの開発が急ピッチで進んでいる。

ボーイング社の進めている構想によれば、二〇〇一年後半には米国内で実用化し、欧州で二〇〇二年末、大西洋地域で二〇〇三年後半、そしてアジアは二〇〇四年後半の運用を予定しているが、接続料は3時間で10ドル20セントだという。

構想が実現すると、ビジネスマンは離着陸時以外はネットワークから外れる心配もなくなり、空の旅も安心してできるようになる。

ビジネスやファーストクラスでは、隔離されたスペースで思う存分仕事のできる「オフィススペース」や、ゆったりとアルコールの楽しめるバーカウンター、マッサージシートなども設置されている例もある。

自分の都合で楽しめるビデオ、食事

機内の娯楽設備としては乗客が自分の好きな時間に、希望のオーディオープログラムを楽しめる「VOD(ビデオーオンーデマンド)システム」が画期的だ。エコノミークラスに導入しているエアラインはまだないが、レーザーディスクを利用し、乗客からの要求デマンド)のあった時点で一枚のディスクから時間差をつけて情報を読み取って映像を送る仕組みだ。

同じディスクで複数の乗客のまちまちな時間のリクエストに応えることができるだけでなく、食事を楽しんだり、トイレへ行くために、乗客が途中で止めることや戻すことにも対応できる。

また、食事もいつでも希望の時間にとれるよう準備を整えているエアラインもある。ブリテイツシュ・エアウェイズは、新しいファーストクラス「ファースト」の導入にあたって、食事時間とメニューの自由化を盛り込んだ。食事時間は、乗客の気の向くままで、飛行中自由に指定することができる。

離陸後に軽い食事を済ませて寝るのもよし、ビデオを楽しんで腹がすいたところでタップリとるのもよし、ということだ。メニューは五-六皿で構成されるフルコースの中から選択もできるので、メニュー、量ともに選べる。まさにファーストクラスの極致といえるだろう。

同様のサービスは、アンセットーオーストラリア航空でも始められており、ビジネスクラス(同社はファーストクラスを廃止しているので、事実上の最高クラス)では、同乗しているシェフが盛り付けた料理を乗客の希望する時間にサービスする。

これからの機内サービスは、質の高さだけでなく時間でも希望がかなえられそうだ。飛んでいる状況がひと目でわからエアーショウシートテレビのついている機材にはたいてい「エアーショウ」のプログラムが組み込まれている。

「空で行われるミュージカルショウ」かと思ってチャンネルを合わせると落胆することになるのだが、地図上に描かれたビジュアルと数値で搭乗機の飛行状態を刻々と表示する。表画面で地図の上に飛行機のマークが現在の飛行の方向と位置を示す。

地図は航路全体の飛行ルート、現在地点の拡大とが交互に現れるので、飛行全体の進み具合と通過地点を確認できる。搭乗機が飛行の方角を変えれば、画面上の飛行機のマークも向きを変えるという連動ぶりなので、リアルタイムの情報を見られる。窓側席にすわっている場合には、拡大図と下の景色を見比べることができ、特別の感激がある。

裏画面では、目的地までの距離、飛行高度、飛行速度、外気の温度、目的地までの飛行時間などが表示される。離陸して上昇を続けると高度を示す数値はどんどん増え、安定飛行に入ると一万-一万二〇〇〇メートルに達する。その頃になると温度は大きく下がり、マイナス五〇-六〇度を指す。あらためて飛行機とはたいへんな高空を飛んでいるものだという実感がわいてくるだろう。

目的地に近づくと、数値がゼロに向かって減っていく。高度は高空では五桁あった桁数も、着陸直前には三桁になる。目的地までの飛行時間がゼロを表示する瞬間、搭乗機は大地をとらえ、身体には大きなショックが加わる。同時に画面は「目的地までの距離○キロ」を告げて、飛行が無事に終了したことを実感できる。

娯楽設備で差別化を図る

ある調査によると、国際線の航空旅客の機内での一般的な時間の過ごし方は、二五%が食事やトイレなど生理的な時間、三五%が睡眠時間、残りの四〇%が娯楽に使われているという。十一時間のフライトであれば、三時間が食事等、四時間一〇分が睡眠、四時間五〇分か娯楽となる。

機内のサービス娯楽設備は、いまやビデオ、テレビゲーム、カジノとエスカレートし、九八年には航空業界全体で一七億ドル以上が娯楽設備に投じられた。

世界のエアラインは近年、液晶テレビをエコノミークラスを含めて全座席に組み込むようになった。機材の進歩によって画像や音質がよくなっていることに加えて、プログラムの内容がバラエティに富み、個人の好みで好きなプログラムを選択できる。

「グリスワールド」と名付けられたシンガポール航空の娯楽システムは、任天堂のテレビゲーム、映画、スポーツ、芸術、ニュースなど二二のビデオチャンネル、二一のオーディオチャンネルが、日航の新型ジャンボに搭載されている「マジック・システム」では、映画一〇、音楽一八チャンネル、ゲームー○種が用意されている。

また、ヴァージン・アトランティック航空の「オデッセイ」はツァージンクループの強みである音楽番組九チャンネルをはじめ、ビデオこIチャンネル、テレビゲームー○種、飛行状況がひと目でわかる「エアーショウ」(ナビゲーションマップ)が組み込まれている。

エコノミークラスでも一人一台のシートテレビが設置されているエアラインは、このほかにキャセイ・パシフィック、JAS(B777のみ)などだが、これからはどんどん増えていきそうだ。

また、刺激を強めているエアラインの中には、各国の法律にしばられない公海上の空を飛ぶのをよいことに、ギャンブルを機上に取り入れている会社(ヴァージンなど)もある。

乗客はクレジットカードを使って、最大三五〇ドルまでの損を覚悟するかわりに最大三五〇〇ドルの儲けを楽しむために、スロットマシンやポーカーをビデオゲームでチャレンジする。

航空会社の方は、これらのギャンブルで年間五億ドルの利益を上げているというのだから、乗客の熱中ぶりがわかる。

「速く、快適に」飛ぶ

飛行機旅行の最大のメリットは「速く、快適に」移動できることだ。「速さ」は、他の交通機関に比べて優勢である。現代のジェット旅客機は、マッハ(音速)の〇・八五倍の時速約一〇〇〇キロのスピードで飛行できる。したがって、陸海をまたがる東京-札幌間のような区間では圧倒的な強みを発揮し、航空旅客のシェアは九七%に達している。

しかし、空港とを行き来する(アクセス)交通手段にかかる時間を考えると、短距離では鉄道にかなわない。その分岐点は、距離で四〇〇キロ、鉄道の所要時間で三時間といわれている。

国内に当てはめると、東京から仙台、新潟、名古屋は鉄道が圧倒的に強く、岡山あたりから航空が盛り返す。当然のことながら、出発地と到着地の空港間だけでなく、自分の家の戸口から目的地の家の戸口の「ドアートウードア」の所要時間が問題なのだ。

飛行機にはコンコルドのようなマッハ二・二(音速の二・二倍)の超音速機もあるが、環境問題が完全に解決できていないことから、就航路線は限られている。また、運航コストが高いことから、大量輸送に適したジャンボ機などに運賃面でかなわない。

次に「快適さ」だ。初期の飛行機は、エンジンの騒音や振動に加えて客室が十分に与圧されていなかったので、寒く、耳鳴りなどが起こる不快な乗り物だった。オーバーを着込み、襟巻きをして機内に乗り込んでも、寒風が吹き込み、乗客はひたすら寒さと振動に耐えていた。

それが地上とほぼ同じ環境で飛べるようになったのだから、たいへんな進歩といえる。さらに、ジャンボジェット機の就航によって、座席の広さ、過ごしやすさははるかに向上したものの、飛行機の航続距離が伸びたことによって直行便が増えた。乗客はただ座っているだけなのだが、さすがにI〇時間を超すフライトは正直いってきゅうくつだ。

利用しやすいダイヤとは

旅客が利用しやすい交通機関の運航ダイヤのポイントは、①一日中まんべんなくダイヤが組まれている、②覚えやすいようにパターン化されているIの二点にある。逆にダイヤが片寄っていたり、運航時間帯でダイヤがまちまちだと、いちいち確認しなければならず面倒くさいだけでなく、行動が交通機関によって制約されてしまう。

時刻表を持たずに空港へ行ってもあまり待たずに乗れ、いったん覚えた出発時刻が他の時間帯でも適用できるなら、とても便利だ。

国内=日帰りができるダイヤか

日本の航空は、欧米に比べると便数が非常に少ない。幹線を除き、地方路線では一日一便の路線も少なくない。地方路線でも一日に最低二便のフライトが欲しい。

一日一便では日帰り旅行もできず、航空旅行のメリットが発揮できない。ちょっとした用件ならば泊まらずに済ませられれば、航空旅行の価値は高まる。宿代を節約できるなら、航空運賃が多少割高でも納得できるというものだ。

国際線は毎日運航、パターンダイヤが最適

国際線でうまくできているのは、東京―香港線だ。日航もキャセイも毎日三便ずつを運航しているうえ、ダイヤを朝から夜まで適度に散らしている。朝一番のフライトで飛べば午後一番に香港に入れ、翌日の最終便に乗ればI・五日をまるまるビジネスに使える。

しかも、毎日同じ時間に飛んでいるので、都合が悪くなれば日にちだけずらせばよい。スケジュールをIから組み立て直す手間が省ける。

この対極にあるのがニュージ圭フンド航空で、ダイヤがまったくバラバラだ。たとえば大阪発のオークランド行き。週に七便運航しているのに、同じ九八便が月曜は一八時二〇分発(クライストチャーチ経由)、木・金曜は二一時発(直行)、土曜は一八時五〇分発、日曜は一九時四五分発でクライストチャーチ経由。火曜と水曜は便名が三二便に変わって火曜の出発時刻は二〇時一五分発(直行)、水曜は一六時五〇分発(クライストチャーチ経由)という具合である。

日本や欧州系のエアラインは週一便ずつ増やしていく堅実な戦術をとるが、米国系は毎日運航のマスマーケティングを基本とするので、利用者はわかりやすい。就航するならば週七便、逆に七便の乗客を集める自信がなければ就航しない、というのが原則だ。

だがその一方、公共性などはまったく考えないので、儲かる時間帯にフライトを集中させる。たとえば、東京-サンフランシスコ線が典型だ。ユナイテッドは毎日二便、週一四便を運航しているのだが、東京発の時刻は一七時と一九時。そのためもあって、他社を含めて東京発のサンフランシスコ行きダイヤは毎日五便あるものの、出発時刻は一五時一〇分から一九時の三時間五〇分の時間帯にすべて集中している。交通渋滞などに巻き込まれて空港への到着が遅れても、他社への振り替えもできず、その日の出発はあきらめなければならない(ニューヨークのジョン・F・ケネディ空港行きも毎日五便だが、出発時間帯は八時間に分散している)。

そして、ビジネスマンに重要なことは、出発と到着の時間帯だ。もっとも理想的なのは、こちらを勤めの終わった夜に出て、目的地へ早朝に着ければ時間のむだがない。

かつての欧州線がアンカレッジを経由していた時代にはうまくいっていた。成田を夜の二二時頃に離陸するフライトはロンドン、パリに早朝の六時頃に到着し、朝から活動を始められた。

それが直行便が就航するようになって、飛行時間は短くなったものの、かえってタイミングは悪くなり、成田を昼頃発って現地に夕方到着する。日本でも出発当日は仕事にならず。ヨーロッパの第一日目も寝るだけという状態になる。

望ましい「新しい機材」

新しい機材は「おニュー」で気持ちがよいというだけでなく、実際のメリットが大きい。飛行機は量産品ではあるものの、すべてがオーダーメイドのようなものなので、製造のたびに改良が加えられてゆく。問題箇所や使いにくい点は、同型機でも、新しいほどどんどん改善されるのだ。

乗客からすると、より。楽しく、快適‘になっている。近年の機体では、まず収納場所が増えている。B747ジャンボ機でも、―(ダッシュ)200型は乗客の数に対して収納スペースが少なく、長距離便では乗客同士で頭上の荷物棚の取り合いになることも珍しくなかった。

荷物棚からあふれた荷物は座席の周囲に置かざるをえず、ただでさえ狭いスペースがより窮屈にならざるをえなかった。しかし、-400は頭上の荷物棚が広げられたため、ほとんどの乗客は近くの収納スペースが利用できるよう配慮されている。

また、二階席では座席と窓の間にも据え置き型のスペースがあり、窓側に座った乗客は事実上自分専用の格納スペースを使うことができる。

もうひとつは、娯楽設備が充実していることだ。近年のサービス競争では、娯楽設備が重要なテーマになっている。電子技術の発達により、プログラムが多彩になったうえに個別対応が可能なので、マイペースで娯楽を楽しめるようになった。

運航するエアラインとしても、条件が許せば新造機を積極的に導入したい。イメージのうえで好ましいだけでなく、故障も少なく、また整備費がかからないという具体的なメリットがある。スイスやシンガポール航空などは、新造機をどんどん買い入れ、価値が下がらないうちに転売する方針をとっている。だが、資金が多く必要になるため、なかなかできることではない。

2012年6月21日木曜日

関係に見合うものしか出てこない

金城孝次さんは沖縄の出身ですが、心理療法家になる訓練を京都で受けられ、しばらく京都で仕事をされていましたが、のちに故郷に戻られて、いまは沖縄で夢分析や箱庭療法により心理療法に取り組んでおられます。

金城さんは、関係の場のリアリティについて、次のように問いかけておられます。「関係づくりを通してクライエントは癒され、心のエネルギーを取り戻し、そして自分のあるべき姿を見出し、成長していくと思われます。

関係の場のリアリティに見合ったものしか相手が表現してこないとすれば、『関係の場のリアリティ』として心理療法家がクライエントとの間で気をつけることはどんなことでしょうか。

かかわる者も対極性の中に身を投げだして、そこに生きることを学んでいかなければと思うのですが」クライエントはまさに関係の場のリアリティに見合ったものを出してきます。関係が薄ければ、薄いことしか出てこないし、深ければ深いことが出てきます。

それともう一つ気をつけなければならないのは、非常にむずかしいクライエントの場合、関係の場のリアリティを超えたものが出てくることもあります。

たとえば、会ったばかりでまだ関係ができていない段階から、普通なら隠しておく自分の秘密を次から次に話しだしたりします。

これを、これだけ話してくれたのだから、自分は信頼されているに違いないと思いこむのは勘違いです。それは抱える問題があまりにも大きすぎるために関係の場の認識力がなく、それでいろいろしゃべっているだけなのです。まだ関係の場はなにもできていませんから、そういう場合は、その話をいったんとめなければなりません。

カウンセリングに熟練してくると、最初に挨拶を交わしただけでも、ある程度の関係の場をつくることができるようになりますが、通常は、関係の場というのはその場に応じてだんだんとつくっていくものです。だから、自分が感じているリアリティを超えて出てくる場合は要注意です。そうとうむずかしいクライエントだと覚悟したほうがいいでしょう。