2014年10月3日金曜日

スウェーデンでの炭素税の制度

スウェーデンではこのように、他の国々にさきがけて、炭素税の導入にふみきったわけですが、それはどのようにして可能となったのでしょうか。スウェーデンでの炭素税の制度が導入された過程をふりかえってみると、民主主義的な政治の理想像がえがかれているように思います。

スウェーデンでの炭素税の制度はじつは、もっと広い税制改革の一環として導入されたものでした。一九九一年の炭素税導入に先立つこと三年、一九八八年、スウェーデンの国会の中に、税制改革のための委員会がつくられましたが、環境税の導入はその一部だったのです(ちなみに、スウェ七アンは、日本やアメリカと異なって、国会は一院制をとっています。)

国会の中につくられた税制改革委員会は与党、野党を含めて、国会議員の人数に比例して、その構成メンバーが決められました。税制改革委員会は、その下に専門委員会をつくり、関係省庁の代表、専門家、一般市民の代衣などを任命します。専門委員会は、炭素税をはじめとして税制改革全般について、一年間にわたって調査・研究し、税制改革の原案を作成して、本委員会に提出しました。本委員会ではさらに議論を重ねて、一年間かかって、税制改革案をつくり、国会に提出しました。税制改革委員会の構成からわかるように、本委員会が出した税制改革案が国会で承認されることは確実です。

スウェーデンでは、税制改革にかぎらず、国会で必要な法案を決めるときに、同じような手続きを経て審議されます。一九九一年の炭素税の制度は、地球環境を保護するための政策として画期的な意味をもつものですが、その導入は、このようなスウェーデン国会の民主的でしかも理性的な手続きのもとではじめて実現できたといってよいと思います。スウェーデン国会のあり方は、これまでくり返し強調してきたリペラリズムの思想が、実際の政治の基調となっていることを示しています。日本の国会とあまりにも大きな違いかおるのではないでしょうか。