2014年4月17日木曜日

沖縄の人々を怒らせた理由

日本の国是は明治以来、中央集権の強化である。それが100年以上続いた今、地方には、人材も独自文化も進取の気性も、ほとんど残っていない。地方に受け皿がないのだから、地方分権はもともと「地方切り捨て策」である。しかし、そこに「官僚解体」という隠れた目的が加わったことで、地方分権の主張は一気に活気づいた。舛添が、地方分権の先駆例となる「大阪独立」を「秘策」と呼んだのは、誇張ではなかった。県知事の中には官僚出身者も多く、彼らの多くは地方分権構想をスローガンだけの表層的な内容に薄めようとしたドそれに対し、中央政界からは、選挙のたびごとに橋下や東国原といった数少ない、人気のある独立系の知事を大騒ぎして盛り立てる動きが出て、地方の人々が地方分権に目覚めるのを誘導している。

鳩山の民主党は、この手の人々を奮起させる誘導策を、すでに沖縄で「普天間基地問題」としてやって、成功している。民主党は、野党時代から「沖縄ビジョン」で普天開基地の県外・国外移転を求め、政権に就いた後は、県外・国外移転を基調政策としつつ鳩山が「沖縄の民意を重視する」と言って沖縄県民を扇動した。鳩山が官僚とマスコミによる敵対策の中で動けなくなり、指導力が落ちた今では、沖縄のほとんどの人々が「普天間基地を県外(国外)に移転するまで戦う」という意志を持つに至った。

普天間基地問題が喧伝される中で、日本人は全国的に「地元に米軍基地が来たら大変なことになる」「そもそも日本に米軍基地が必要なのか」と考え始めた。普天間基地の移設先として名指しされた鹿児島県の徳之島では、大半の島民が移設に反対し、猛烈な反対運動を始めた。普天間基地がある限り、沖縄県民は基地追い出しの運動を続けるだろうし、本土にどんな移設先候補が出てきても、地元の人々が反対する事態となった。硫黄島など無人島への移設には米軍が反対する。最後には、米軍基地に日本から出ていってもらうしかない。米軍は、とっくに出ていく気になっている。日本には立派な自衛隊がある。もともと米軍の駐留は必要ない。

ここで当然「与党や首相には権力がある。民主党が米軍に出ていってほしいのなら、米国にそう言えばよい。沖縄県民の反基地運動の誘発などという回りくどい方法は必要ないはず」という疑問が出る。しかし実態は、そんなに理想的ではない。たとえば2009年秋以来、日本の外務省が軍事などに関する過去の日米密約の文書を破棄し、政治家や国民に知らせないようにしてきたことが民主党政権によって暴露されている。軍事だけでなく、1970年代にドル支援のために日銀が巨額資金を米連銀に無利子で半永久的に貸し出していた件も、日本側は文書を破棄していた。つまり官僚は、首相や議員に大事なことを教えないようにしてきた。首相や大臣は、マスコミや世論に非難されぬよう、うまくやる必要があるが、そのための情報や外交ルートなどは、すべて官僚が握っている。官僚は政治家が丸裸だと知りつつ、何でもお申し付けくださいといんぎんに言う。

同様の事態は米国でもある。オパマはアフガニスタンから撤退したいが、策略を持った側近に隠然と阻まれている。軍産英複合体が作った米国の英米中心主義の体制を壊すため、米中枢の多極主義者は、軍産複合体の一員のようなふりをして権限を握り、イラク戦争やイスラム過激派扇動などを過剰にやって失敗させるという、手の込んだ策略を展開した。オバマの顧問であるブレジンスキーは「世界的に人々が政治覚醒する時代が来た」と言ったが、これは彼自身を含む多極主義者が、世界的に人々の反米感情や独立精神を扇動し、世界を多極化する戦略である。普天間や地方分権の問題で、日本の民主党などがとっている戦略は、ブレジンスキーのものとよく似ている。