2015年2月4日水曜日

歯止めと逆転のためには

少子化・高齢化への対処策を「負担増か福祉レベルの切り下げか」だけの袋小路に追い込んでしまわないほとんど唯一の脱け道が、男権社会遺制の打破などをもとに、出生率の回復をはかることである。

産みたくない者に産めと強制することはできないし、すべきでない。ただ、住宅の量・質などの生活条件も含めて、現在の日本に「産みたくても産めない」「産む気になれない」と思わせるような不合理な阻害要因があるなら、これを取り除くことは、それこそ政治であり政策である。

先に引用した八代尚宏氏らの研究は「少子化は社会的病理の表れ」であるとし、特に女性の社会的地位と出生率との相関関係についての先進各国間の比較を次のように要約している。

「女性の経済的地位の向上に対応できない、企業や家庭における伝統的な制度・慣行が根強い国ほど、子育てを担う家庭の機能の低下が著しく、出生率の低下の度合は大きい」

「女は家庭を守れ」と決めつけるような男権社会遺制は、日本における税制や年金制度など、「家族・家庭」単位に成り立っている仕組みを中心に考えると、必ずしも「男が悪い」ばかりではあるまい。

男権遺制を改め、出産、育児にかかわる女性への不合理な負担をなくしていくことを通じて出生率の回復をはかるには、男女の性差を超えた、日本の社会全体の合意を広げていかねばならないのである。