2014年8月6日水曜日

粗糖相場、反ブラジルの思惑

粗糖の国際価格が膠着(こうちゃく)状態に陥っている。

指標のニューヨーク市場の先物(期近)は終値ベースでみて、2月上旬につけた1981年以来の高値である1ポンド19.30セントを上値抵抗線とし、6月中旬に付けた直近安値の同14.71セントを下値支持線とする範囲内に落ち着いてしまった。

昨年来2倍以上に高騰し、一時はニューヨーク市場の総建玉(未決済取引残高)は55万枚(枚は最低取引単位、1枚は50英トン)前後に達していたのが、いまでは42万枚程度まで縮小。買い方だった商品ファンドなどの投機筋は粗糖を手じまって米長期国債などのほかの投資先を模索しているためだ。

高騰の背景となっていたのはガソリン混合燃料のエタノール向けサトウキビ需要の拡大観測だった。1990年代初頭から先行してエタノール生産に力を入れてきたブラジルでは今後も一層の燃料用エタノールの普及拡大を進める姿勢だ。

一方、米国ではブラジル産エタノール輸入拡大に慎重姿勢が広がり、自国産トウモロコシを原料としたエタノール生産拡大へ向けた動きが活発化している。

脱石油資源の取り組みは長期的な流れとなってくるのは確実だ。だが、原料としてトウモロコシとサトウキビのどちらが主力となるのか、不透明さを増しつつあることが、粗糖相場膠着の一因にもなっている。

いずれは中国やインドなどでもエタノール生産は広がってくると予測されている。だが、タピオカなどほかの農作物や木質繊維など、より現地事情にあった低コストな原料からエタノールを製造する技術の研究が進んでいる。日本でも沖縄でのサトウキビ原料のエタノールの試験生産に加え、新潟でコメを原料とした生産計画も始まっている。

先行して普及が拡大したのがブラジルでのサトウキビを原料としたエタノールだったことから粗糖相場にまず火がついた。早くから設備増強を進めてきた同国では自国消費分以上のエタノールの輸出拡大も目指している。

世界最大の生産量を武器に粗糖市場では相場を左右する往年のキングメーカーでもある同国は、エタノール市場でも覇権を握りたいというのが思惑だ。だが、国家戦略物資でもある燃料の原料に関してやすやすと輸入依存に甘んじる国が出てくるとは考えにくい。

長期的には自動車向けに限らず、幅広い分野への普及拡大の可能性も秘めているエタノールだが、「反ブラジル」ともいえる微妙な各国の戦略が見えてくるに従い、粗糖国際相場も方向感を失いつつあるようだ。