2015年8月4日火曜日

興味ある擬態共生

スピロヘータという微小管をもつ最も動きの素早い微小生命が、他の細胞と共生した結果、生命の爆発的な発展を呼び起こし、共生生物の数も種類も飛躍的に増大したというのである。いまでも、スピロヘータは共生相手に潜り込んで、動けるようにする性質を失っていないそうである。われわれ人間の脳もまた、こうしたスピロヘータの卓抜なはたらきによって思考活動をつづけることができるのであろう。

マルグリスは、「脳は共生の産物」であるとして次のように述べているが、なかなか味わい深い言葉ではないだろうか。昔、微生物のスピロヘータは生きるために夢中で泳がなければならなかった。何十億年も経った今、彼らは脳という器官に組込まれ、その核酸とタンパクの遺物が、細菌が集まって進化した非常に複雑な混合体である人間の行動にも深く関係している。

もしかすると、現在の人問たちは町に、市に、また電波でつながれて集まり、思考がスピロヘータの泳ぎの上に成り立つのと同様に、各人の思考が集まって思いも寄らないネットワークを作り上げ始めているのかも知れない。われわれの個々の脳細胞、その微小管はスピロヘータの遺物と思われるものが人間の意識において占める役割を知らないのと同様、人勢の人々が集団組織を作ったら、どんな力を発揮するのか、われわれは気付いていない。

植物に、擬態共生という現象がある。たとえばイネとヒエを一緒に植えておくと、ヒエが人間に引き抜かれるのを恐れてか、ヒエがだんだんイネのやに似てくる。これは一つのテレパシーというか、植物白身が自らを防衛するコミュニケーションによるもので、光と色の合成による植物社会での共生現象の一例とも言える。また、アマはそれだけを植えておくとなかなか花が咲かないが、ナズナと一緒に植えておくと、ナズナの花が咲き実がなるにつれて、アマにも花が咲き実がみのる。