2016年3月3日木曜日

ECUの魅力とは

ECUは最初は単なる計算単位として使われていた。しかしECUはしだいに金融資本市場において取引手段として使われるようになった。まず、銀行がECU建ての預金を作る。その預金をつかって融資を行ったり、債券の発行や資本取引を行ったのである。その対象はユーロ市場であった。ここで言うユーロ市場という言葉は、単一通貨ユー-ロとは関係ない。ユーロ市場とは、ヨーロッパにおける資本通貨取引市場であって、世界中から資金の集まる巨大な自由市場である。

ここでのECU債の発行やECUによる取引は爆発的な伸びを見せたのであった。ECUの魅力が高まるほど、ECUへの需要が増え、銀行はECUを作っては融資を行う。現代の錬金術のゆえんである。どうしてECUは人気があるのか。第一に、ECUはバスケット通貨として抜群の安定性がある。最強の通貨マルクを核に作られた統一通貨であるから、参加国のある特定の国の通貨が不安になっても、ECU全体の価値にはほとんど響かない。いざとなればEMSの介入もある。

第二に、バスケット通貨であるから為替交換のコストを削減できる。こういったメリットに乗って、固定利率債、変動利率債、ゼロークーポン債、転換債、ワラント債等のECU債が発行されたのであった。

このようなECUの魅力はそのまま現在のユーロに引き継がれていく。今度はユーロ市場におけるユーロ債の問題である。ユーロは最初からヨーロッパの公的に認知された通貨として船出した。国際通貨制度の非嫡出子ECUは、認知されるまでに大変な苦労をした。日本もECUを通貨として認知するのに慎重であった国のひとつである。日本の優秀な大蔵官僚もECUという「変な通貨」にさぞ戸惑ったことだろう。それに比べるとユーロは幸せな通貨である。

いま一つは、ECUを利用する経済仁体と枠組みがEC共同体という形でしっかりりえられていたということである。具体的には、ECUはEMS加盟九力国の外貨準備と金の保有高の二〇パーセントを裏付けとして創出される。この点が同じ「第二の通貨」といっても協定だけで資産の裏付けのないSDRと違うところである。