2012年6月30日土曜日

自分の都合で楽しめるビデオ、食事

機内の娯楽設備としては乗客が自分の好きな時間に、希望のオーディオープログラムを楽しめる「VOD(ビデオーオンーデマンド)システム」が画期的だ。エコノミークラスに導入しているエアラインはまだないが、レーザーディスクを利用し、乗客からの要求デマンド)のあった時点で一枚のディスクから時間差をつけて情報を読み取って映像を送る仕組みだ。

同じディスクで複数の乗客のまちまちな時間のリクエストに応えることができるだけでなく、食事を楽しんだり、トイレへ行くために、乗客が途中で止めることや戻すことにも対応できる。

また、食事もいつでも希望の時間にとれるよう準備を整えているエアラインもある。ブリテイツシュ・エアウェイズは、新しいファーストクラス「ファースト」の導入にあたって、食事時間とメニューの自由化を盛り込んだ。食事時間は、乗客の気の向くままで、飛行中自由に指定することができる。

離陸後に軽い食事を済ませて寝るのもよし、ビデオを楽しんで腹がすいたところでタップリとるのもよし、ということだ。メニューは五-六皿で構成されるフルコースの中から選択もできるので、メニュー、量ともに選べる。まさにファーストクラスの極致といえるだろう。

同様のサービスは、アンセットーオーストラリア航空でも始められており、ビジネスクラス(同社はファーストクラスを廃止しているので、事実上の最高クラス)では、同乗しているシェフが盛り付けた料理を乗客の希望する時間にサービスする。

これからの機内サービスは、質の高さだけでなく時間でも希望がかなえられそうだ。飛んでいる状況がひと目でわからエアーショウシートテレビのついている機材にはたいてい「エアーショウ」のプログラムが組み込まれている。

「空で行われるミュージカルショウ」かと思ってチャンネルを合わせると落胆することになるのだが、地図上に描かれたビジュアルと数値で搭乗機の飛行状態を刻々と表示する。表画面で地図の上に飛行機のマークが現在の飛行の方向と位置を示す。

地図は航路全体の飛行ルート、現在地点の拡大とが交互に現れるので、飛行全体の進み具合と通過地点を確認できる。搭乗機が飛行の方角を変えれば、画面上の飛行機のマークも向きを変えるという連動ぶりなので、リアルタイムの情報を見られる。窓側席にすわっている場合には、拡大図と下の景色を見比べることができ、特別の感激がある。

裏画面では、目的地までの距離、飛行高度、飛行速度、外気の温度、目的地までの飛行時間などが表示される。離陸して上昇を続けると高度を示す数値はどんどん増え、安定飛行に入ると一万-一万二〇〇〇メートルに達する。その頃になると温度は大きく下がり、マイナス五〇-六〇度を指す。あらためて飛行機とはたいへんな高空を飛んでいるものだという実感がわいてくるだろう。

目的地に近づくと、数値がゼロに向かって減っていく。高度は高空では五桁あった桁数も、着陸直前には三桁になる。目的地までの飛行時間がゼロを表示する瞬間、搭乗機は大地をとらえ、身体には大きなショックが加わる。同時に画面は「目的地までの距離○キロ」を告げて、飛行が無事に終了したことを実感できる。