スウェーデンではこのように、他の国々にさきがけて、炭素税の導入にふみきったわけですが、それはどのようにして可能となったのでしょうか。スウェーデンでの炭素税の制度が導入された過程をふりかえってみると、民主主義的な政治の理想像がえがかれているように思います。
スウェーデンでの炭素税の制度はじつは、もっと広い税制改革の一環として導入されたものでした。一九九一年の炭素税導入に先立つこと三年、一九八八年、スウェーデンの国会の中に、税制改革のための委員会がつくられましたが、環境税の導入はその一部だったのです(ちなみに、スウェ七アンは、日本やアメリカと異なって、国会は一院制をとっています。)
国会の中につくられた税制改革委員会は与党、野党を含めて、国会議員の人数に比例して、その構成メンバーが決められました。税制改革委員会は、その下に専門委員会をつくり、関係省庁の代表、専門家、一般市民の代衣などを任命します。専門委員会は、炭素税をはじめとして税制改革全般について、一年間にわたって調査・研究し、税制改革の原案を作成して、本委員会に提出しました。本委員会ではさらに議論を重ねて、一年間かかって、税制改革案をつくり、国会に提出しました。税制改革委員会の構成からわかるように、本委員会が出した税制改革案が国会で承認されることは確実です。
スウェーデンでは、税制改革にかぎらず、国会で必要な法案を決めるときに、同じような手続きを経て審議されます。一九九一年の炭素税の制度は、地球環境を保護するための政策として画期的な意味をもつものですが、その導入は、このようなスウェーデン国会の民主的でしかも理性的な手続きのもとではじめて実現できたといってよいと思います。スウェーデン国会のあり方は、これまでくり返し強調してきたリペラリズムの思想が、実際の政治の基調となっていることを示しています。日本の国会とあまりにも大きな違いかおるのではないでしょうか。
2014年10月3日金曜日
2014年9月3日水曜日
取引所による上場会社の規制
この場合、損害を被った投資家は、発行者やその役員の一般不法行為(民法709条)に基づく損害賠償責任を追及することになりますが、取引所の自主ルールの違反が直ちに不法行為法上の「違法性」の要件を満たすとはいえず、開示の遅滞や不実開示が違法と評価されるのはどのような場合か総合的に判断されることになるでしよう。取引所は、上場会社の決算発表の際に、次期の売上高・経常利益等の業績予想、利益配分に関する基本方針、経営成績・財政状態の当期実績および次期見通しの分析などの開示を求めており、決算内容とこれらを併せて決算短信と呼んでいます。決算短信は、有価証券報告書による開示よりも前に、決算情報を速やかに投資家に開示することを目的としています。
決算短信の開示内容は投資家のニーズを反映して近年充実が図られてきましたが、開示情報の増大により決算発表が遅れる懸念もあるため、東京証券取引所では、決算短信の内容を整理・簡素化し、原則として期末後45日以内に発表するよう求めています。決算短信に含まれる情報のうち業績予想は、法的には、上場規則によって開示が義礎づけられるものではなく、証券取引所の要請により上場会社が自発的に開示するものです。経営者による業績予想は投資家の投資判断にとって極めて重要な情報ですし、経営者がアナリスト等に個別に業績予想またはその判断資料を提供するのに比べると「公平な開示」を実現するものといえ、多くの上場会社が取引所の要請に応じて業績予想を公表しているのは好ましい慣行です。
業績予想の開示は、それが外れたということだけから虚偽の開示であると評価されることはありませんが、合理的な根拠に基づかない業績予想は、それを開示した時点ですでに虚偽の開示といえます。その場合、業績予想が外れる可能性を投資家に表示して注意を促すだけでは、発行者は免責されません。証券取引所は、四半期開示やタイムリー・ディスクロージャーのように、法令よりも高いレベルの情報開示を自主規制によって実現してきました。上場会社のコーポレートーガバナンスや上場会社の行動についても、自主規制による規律づけは可能です。質のよいルールが制定されれば上場会社にも投資家にも利益になりますので、市場間競争が機能すれば、放っておいてもよいルールが制定されると期待できます。
もっとも、いったん上場した会社が取引所を変更するにはコストがかかりますし、会社は上場後に適用される自主ルールの内容だけを見て上場先を決定するわけではありませんから、実際には、自主ルールについて競争が成立しているとはいえないでしょう。コーポレートーガバナンスに関する諸外国の例を見ると、ニューヨーク証券取引所(NYSE)は、上場会社の取締役の過半数が独立取締役であること、および取締役候補者選考・コーポレートーガバナンス委員会、報酬委員会、監査委員会のメンバーが全員独立取締役であることを、上場会社に求めています。これは、エンロン事件等の会計不正事件を経て、2002年制定のサーベンスーオックスリー法によって連邦法によるコーポレートーガバナンスヘの介入が強力に推し進められた結果ですが、NYSEの規則の内容は、連邦法に基づいて制定されたSEC規則のさらに先を行くものです。
これに対しロンドン証券取引所(LSE)は、上場会社が尊重すべき最善慣行規則を定め、これと異なる基準を採用する会社には、その理由を開示させ、開示によって会社の慣行を誘導する政策(「従うか、さもなくば説明せよ」のルール)を採用しています。以下では、わが国の証券取引所による上場会社の規制を、東京証券取引所(東証)の例を用いて紹介します。平成17年ころに、敵対的な企業買収が数件試みられ、投資ファンドが積極的に株主権を行使するなど、企業の現経営陣が「買収の脅威」に晒される事態が生じました。これに対応して上場会社は、ライツプラン(ポイズンピルともいう)と呼ばれる新株予約権を典型とする、さまざまなタイプの買収防衛策を導入しました。
決算短信の開示内容は投資家のニーズを反映して近年充実が図られてきましたが、開示情報の増大により決算発表が遅れる懸念もあるため、東京証券取引所では、決算短信の内容を整理・簡素化し、原則として期末後45日以内に発表するよう求めています。決算短信に含まれる情報のうち業績予想は、法的には、上場規則によって開示が義礎づけられるものではなく、証券取引所の要請により上場会社が自発的に開示するものです。経営者による業績予想は投資家の投資判断にとって極めて重要な情報ですし、経営者がアナリスト等に個別に業績予想またはその判断資料を提供するのに比べると「公平な開示」を実現するものといえ、多くの上場会社が取引所の要請に応じて業績予想を公表しているのは好ましい慣行です。
業績予想の開示は、それが外れたということだけから虚偽の開示であると評価されることはありませんが、合理的な根拠に基づかない業績予想は、それを開示した時点ですでに虚偽の開示といえます。その場合、業績予想が外れる可能性を投資家に表示して注意を促すだけでは、発行者は免責されません。証券取引所は、四半期開示やタイムリー・ディスクロージャーのように、法令よりも高いレベルの情報開示を自主規制によって実現してきました。上場会社のコーポレートーガバナンスや上場会社の行動についても、自主規制による規律づけは可能です。質のよいルールが制定されれば上場会社にも投資家にも利益になりますので、市場間競争が機能すれば、放っておいてもよいルールが制定されると期待できます。
もっとも、いったん上場した会社が取引所を変更するにはコストがかかりますし、会社は上場後に適用される自主ルールの内容だけを見て上場先を決定するわけではありませんから、実際には、自主ルールについて競争が成立しているとはいえないでしょう。コーポレートーガバナンスに関する諸外国の例を見ると、ニューヨーク証券取引所(NYSE)は、上場会社の取締役の過半数が独立取締役であること、および取締役候補者選考・コーポレートーガバナンス委員会、報酬委員会、監査委員会のメンバーが全員独立取締役であることを、上場会社に求めています。これは、エンロン事件等の会計不正事件を経て、2002年制定のサーベンスーオックスリー法によって連邦法によるコーポレートーガバナンスヘの介入が強力に推し進められた結果ですが、NYSEの規則の内容は、連邦法に基づいて制定されたSEC規則のさらに先を行くものです。
これに対しロンドン証券取引所(LSE)は、上場会社が尊重すべき最善慣行規則を定め、これと異なる基準を採用する会社には、その理由を開示させ、開示によって会社の慣行を誘導する政策(「従うか、さもなくば説明せよ」のルール)を採用しています。以下では、わが国の証券取引所による上場会社の規制を、東京証券取引所(東証)の例を用いて紹介します。平成17年ころに、敵対的な企業買収が数件試みられ、投資ファンドが積極的に株主権を行使するなど、企業の現経営陣が「買収の脅威」に晒される事態が生じました。これに対応して上場会社は、ライツプラン(ポイズンピルともいう)と呼ばれる新株予約権を典型とする、さまざまなタイプの買収防衛策を導入しました。
2014年8月6日水曜日
粗糖相場、反ブラジルの思惑
粗糖の国際価格が膠着(こうちゃく)状態に陥っている。
指標のニューヨーク市場の先物(期近)は終値ベースでみて、2月上旬につけた1981年以来の高値である1ポンド19.30セントを上値抵抗線とし、6月中旬に付けた直近安値の同14.71セントを下値支持線とする範囲内に落ち着いてしまった。
昨年来2倍以上に高騰し、一時はニューヨーク市場の総建玉(未決済取引残高)は55万枚(枚は最低取引単位、1枚は50英トン)前後に達していたのが、いまでは42万枚程度まで縮小。買い方だった商品ファンドなどの投機筋は粗糖を手じまって米長期国債などのほかの投資先を模索しているためだ。
高騰の背景となっていたのはガソリン混合燃料のエタノール向けサトウキビ需要の拡大観測だった。1990年代初頭から先行してエタノール生産に力を入れてきたブラジルでは今後も一層の燃料用エタノールの普及拡大を進める姿勢だ。
一方、米国ではブラジル産エタノール輸入拡大に慎重姿勢が広がり、自国産トウモロコシを原料としたエタノール生産拡大へ向けた動きが活発化している。
脱石油資源の取り組みは長期的な流れとなってくるのは確実だ。だが、原料としてトウモロコシとサトウキビのどちらが主力となるのか、不透明さを増しつつあることが、粗糖相場膠着の一因にもなっている。
いずれは中国やインドなどでもエタノール生産は広がってくると予測されている。だが、タピオカなどほかの農作物や木質繊維など、より現地事情にあった低コストな原料からエタノールを製造する技術の研究が進んでいる。日本でも沖縄でのサトウキビ原料のエタノールの試験生産に加え、新潟でコメを原料とした生産計画も始まっている。
先行して普及が拡大したのがブラジルでのサトウキビを原料としたエタノールだったことから粗糖相場にまず火がついた。早くから設備増強を進めてきた同国では自国消費分以上のエタノールの輸出拡大も目指している。
世界最大の生産量を武器に粗糖市場では相場を左右する往年のキングメーカーでもある同国は、エタノール市場でも覇権を握りたいというのが思惑だ。だが、国家戦略物資でもある燃料の原料に関してやすやすと輸入依存に甘んじる国が出てくるとは考えにくい。
長期的には自動車向けに限らず、幅広い分野への普及拡大の可能性も秘めているエタノールだが、「反ブラジル」ともいえる微妙な各国の戦略が見えてくるに従い、粗糖国際相場も方向感を失いつつあるようだ。
指標のニューヨーク市場の先物(期近)は終値ベースでみて、2月上旬につけた1981年以来の高値である1ポンド19.30セントを上値抵抗線とし、6月中旬に付けた直近安値の同14.71セントを下値支持線とする範囲内に落ち着いてしまった。
昨年来2倍以上に高騰し、一時はニューヨーク市場の総建玉(未決済取引残高)は55万枚(枚は最低取引単位、1枚は50英トン)前後に達していたのが、いまでは42万枚程度まで縮小。買い方だった商品ファンドなどの投機筋は粗糖を手じまって米長期国債などのほかの投資先を模索しているためだ。
高騰の背景となっていたのはガソリン混合燃料のエタノール向けサトウキビ需要の拡大観測だった。1990年代初頭から先行してエタノール生産に力を入れてきたブラジルでは今後も一層の燃料用エタノールの普及拡大を進める姿勢だ。
一方、米国ではブラジル産エタノール輸入拡大に慎重姿勢が広がり、自国産トウモロコシを原料としたエタノール生産拡大へ向けた動きが活発化している。
脱石油資源の取り組みは長期的な流れとなってくるのは確実だ。だが、原料としてトウモロコシとサトウキビのどちらが主力となるのか、不透明さを増しつつあることが、粗糖相場膠着の一因にもなっている。
いずれは中国やインドなどでもエタノール生産は広がってくると予測されている。だが、タピオカなどほかの農作物や木質繊維など、より現地事情にあった低コストな原料からエタノールを製造する技術の研究が進んでいる。日本でも沖縄でのサトウキビ原料のエタノールの試験生産に加え、新潟でコメを原料とした生産計画も始まっている。
先行して普及が拡大したのがブラジルでのサトウキビを原料としたエタノールだったことから粗糖相場にまず火がついた。早くから設備増強を進めてきた同国では自国消費分以上のエタノールの輸出拡大も目指している。
世界最大の生産量を武器に粗糖市場では相場を左右する往年のキングメーカーでもある同国は、エタノール市場でも覇権を握りたいというのが思惑だ。だが、国家戦略物資でもある燃料の原料に関してやすやすと輸入依存に甘んじる国が出てくるとは考えにくい。
長期的には自動車向けに限らず、幅広い分野への普及拡大の可能性も秘めているエタノールだが、「反ブラジル」ともいえる微妙な各国の戦略が見えてくるに従い、粗糖国際相場も方向感を失いつつあるようだ。
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